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2025/10/27

vol.15 若手職人が語る、“つくる”ということ

手を動かすことが、日々の中心にある。
図面の上では見えない“わずかな差”と向き合いながら、素材の癖を読み、対話する。
その静かな時間の積み重ねが、ひとりの職人の日常を形づけています。

今回話を聞いたのは、家具づくりを担う入社2年目の若手職人・三宅。
中学生の頃に出会った“ものづくり”の感覚が、今の仕事につながっているのだそう。

「お客さまの想いを受け取りながら、自分なりのこだわりも大切にしたい」
その想いを胸に、彼は日々“つくる”ことと向き合っています。

「つくる」という仕事に出会う

三宅が“ものづくり”に初めて触れたのは、中学生のときの技術の授業だったそうです。


木材を切り、小さな棚を組み立てたその感覚が、今でも鮮明に残っていると話してくれました。
その小さなきっかけが、今の仕事へとつながっています。

ひかり工務店に入社したきっかけは、偶然でした。


もともとは家具の会社に入る予定でしたが、その会社がひかり工務店と合併したことで、自然とこの世界に足を踏み入れることになったといいます。

けれど、そこには自分の“つくりたい”を活かせる環境がありました。

「作り手が、お客さまの要望を受け止めながら、自分の感性や工夫も込められる。そこに魅力を感じました。」

そう語る表情には、自分の手で築いてきた日々への実感がにじんでいました。

ただ初めて現場に立ったとき、なにから手をつければいいのかも分からなかったと言います。

「最初はほんまに、なにからやったらええんやろ…って」

材料を前にただ立ち尽くしたその時間も、今では確かな記憶として残っているそうです。

手の中にある「個性」

化粧材の貼り方ひとつで、作り手の個性が出るといいます。
隙間の取り方、仕上げの精度、ミリ単位の感覚。


「僕は結構、かっちりしてるって言われます」


図面だけでは表せない“手の技術と勘”が、彼の仕事の色をつくっていました。

また、尊敬する先輩の名前を挙げながら、目を輝かせて話してくれたのが印象的でした。


「めっちゃ尊敬してます。スピードも精度も、すごいです」


背中を追いながら、日々の作業の積み重ねの中で技を磨いてきたのだそうです。

現場で感じる、ものづくりのリアル

作業の現場には、思うように進まないことも少なくありません。
限られたスペースでの搬入や、時間との戦いになることも多いといいます。

「やっぱり搬入は一番しんどいです。狭い場所で動かないといけないし、段取りも大事になるので」

ただ、その苦労の先には、ものづくりならではの達成感が待っています。


「大変なときほど、最後にピタッと納まったときは気持ちいいんです」


静かにそう話す声には、現場の緊張感と、仕事に向き合う誇りが滲んでいました。

日常の静けさと、未来への想い

仕事を終えたあとの時間も、彼らしさがにじむ部分でした。


煮込み料理が得意で、自炊も欠かさないそうです。
(スペアリブを煮込んだ美味しそうな写真も見せてもらいました)

休日にはアニメを見たり、絵を描いたりと、集中して手を動かす時間が日々のリズムを整えていると話してくれました。

「いつかは、自分の工房を持ちたいんです」


その声は控えめでしたが、はっきりとした意志が感じられました。
目の前の仕事と向き合いながら、少し先の未来を見据える姿が印象的でした。


作業音の中に、笑い声が混じる

「職場の空気は、オンオフがしっかりしていると思いますよ」
と三宅は話してくれました。


現場には、黙々と手を動かす静かな時間があります。
けれどその静けさの奥には、仲間同士の何気ない声や笑いが自然と溶け込んでいるのだそう。

緊張感と安心感がちょうどいいバランスで混ざり合い、
それがこの職場の空気をつくっているのだと感じました。


一人で黙々と作業する時間も、仲間と支え合いながら進む時間も、どちらもこの仕事の大切な一部です。

“つくる”という仕事と、生きていく

三宅は、大きな言葉で自分を語る人ではありません。
手を動かし、少しずつ経験を重ねながら、自分の感覚を磨いてきました。

図面には描けない“わずかな差”と向き合い、
手の中に積み重ねてきた時間が、今の彼をつくっています。

「最初は何もわからなかったけど、最近は“こうしたらいけるな”って浮かぶようになってきました」

その言葉の奥には、静かに育った自信がありました。

これからも彼は、変わらず現場で家具と向き合いながら、手を動かし、“つくる”日々を重ねていきます。

次回のコンテンツは 11/10(月) です!どうぞお楽しみに。