2025/08/18
vol.10 “感覚”で選び、“実感”で続けた営業という道
感覚を信じて進んできた。理由なんか、いらなかった。
「感覚で出会った業種。自分の感覚を信じてみた。そこに理由なんかいらない。」
そう語るのは、ひかり工務店 営業部マネージャーの高井だ。
不器用でも地に足のついた歩みは、彼の22年にわたる営業人生を物語っている。
振り返ってみても、何か明確な夢があったわけじゃない。
むしろ、“なりたい自分”を掲げることよりも、
「今、お客様のためにできることはなんだろう」
その問いを大事にし、目の前のことに誠実に取り組んできた。
結果が出なかった時期もある。
道に迷った時期もある。
華々しいスタートではなくても、愚直に続けること。
目の前のお客様のためにただ動くこと。
22年の営業人生は、そんな“実感の積み重ね”でできている。


「なりたい自分」より、「今この人のために何ができるか」
高井は福岡県北九州市で生まれた。とはいえ、父親の仕事の関係で、あちこちを転々とする転勤族の家庭だった。小学生の頃は京都で過ごし、その後、石川県へ。
環境の変化に戸惑うことも多く、子どもながらに“人と関わること”に距離を置いていた時期もある。
「どちらかというと、人と話すのは苦手なほうでした。だから、黙々とやれる仕事がいいなと思ってたんです」
でも、いつの間にか真逆の「営業」という職種を選び、今では“人と話すこと”が仕事の中心になっている。それは、仕事を通じて「人の心が動く瞬間」に出会ったからだ。
営業として最初の数年間は、まったく成果が出なかった。選ばれない。信頼されない。くじけそうになる日々だった。そんなとき、ある上司との出会いが転機になった。
「すごく“ありがとう”を言う人だったんです。それがめちゃくちゃかっこよくて、僕も言葉にするようになりました」
「教えてほしい」と自分から頼みにいき、車の運転手から始め、営業のいろはを学んだ。尊敬する人に教わる中で、「こうなりたい」という像ではなく、「今、お客様のために何ができるか」を考えるようになった。
「志を持って始めることも大事だけど、それより“今”どうするか。それを大事にしてきました」


「習慣」が、自分の根っこをつくってくれた
社会人になってから営業を始めた一番最初の会社で、あるお客様に言われた一言がある。
「新聞を読むといいよ。いろんなことが見えてくるから」
最初は半信半疑で、気が進まないままページをめくっていた。けれど、いつの間にか読むことが習慣になっていた。
今ではビジネス書や哲学本なども読むようになった。
「本を読む」というより、「情報を拾う」ような感覚だ。
「直感で帯を見て“これだ”と思ったら、とりあえず買う。読みながら、答え合わせをしていく感じです」
「全部読まなくていい。目次を見て気になったところからでもいいし、著者の顔写真を見てから読んでみたり、ネットで名前を検索してみたり。それで“合うな”と思ったら読めばいいし、合わなきゃやめていい。直感に従って、合うかどうかを確かめる感覚です」
そんなふうに読んできた中で、とくに印象に残っているのが『7つの習慣』。
「ダイエットも勉強も、続けるのって難しい。でも、習慣化すると不思議と前に進める。あれはもう、“僕そのものを作ってくれた本”ですね」


もうひとつ、日々の接し方に対する意識を変えてくれたのが『1秒で気がきく人がうまくいく』。
「“気がきく”って、技術じゃなくて姿勢のことなんですよね。相手の立場で想像できるかどうか。それを自分なりに意識するようになりました」
本から得た知識を、若いスタッフにも伝えることも増えた。ただ、指導というより“共有”に近い。
「本の通りに育てようなんて思わない。ただ、自分が感じた気持ちは伝えたい。どこかで誰かの役に立てば嬉しいですね」
暮らしの向こうにある、“感性”を育てる
住宅やインテリアの仕事に関わるようになってからは、家具や暮らしにまつわる本を手に取る機会も増えたという。
「“一脚の椅子を旅の連れにする”っていう言葉があって。椅子を連れて旅をする話なんですけど、それ以上のことを感じさせてくれるんです」
景色、手触り、空気の温度──言葉にできない感覚が、日々の仕事のインスピレーションになる。
「商品がいい・悪いじゃなくて、“この空間でどう過ごしたいか”をお客様と一緒に想像したい。それが楽しいんです」


グラデーションの中を、不器用に歩き続ける
「営業って、毎日が練習です。伝え方に正解はないし、白黒つけづらいことばっかり。でも、“どう感じたか”っていうグラデーションを大事にしたいんです」
軸はない。自分でできたと100%思えたことも、自分に満足できたこともない。
それでも、お客様のためにという想いは、ずっと変わらない。
感覚で選んだ道だからこそ、迷いながらも進み続けられる。
「自己研鑽をし続けることが、僕の流儀です」
不器用でも、今日もまた、自分の感覚と、これまで辿ってきた軌跡を信じて歩いていく。
インタビューを通して、直感や感覚をとても大切にしている人だということが伝わってきた。
私が、表紙の印象だけで選んだ一冊の本を手に取ったとき、
「それでいい。理由なんかいらない。惹かれたということが、もう十分な理由だよ」
そう言って、本を貸してくれた。その言葉が、直感を信じることへの背中をそっと押してくれた気がした。
志を掲げて突き進んできたわけではなく、環境や人との出会いの中で、ただ“今、自分にできること”を重ねてきた人。
感覚に従いながら、実感を積み重ねるように、自分の足で歩んできた。
私たちはつい、大きな目標や理想に向かって走らなければと思いがちだけれど、与えられた場所で地道に頑張ること。目の前の誰かのために誠実であること。その積み重ねが、どんな言葉よりも強く、その人らしさを形づくっていくのかもしれない。
次回のコンテンツは 9/1 公開「建築が好きだからこそ生まれた、お客様に寄り添う営業スタイル」です。お楽しみに。

