2025/11/10
vol.16 心地良さを形にした、“働く”と“迎える”ためのオフィス
“働く場”であり“迎える場”としてのオフィス
ひかり工務店には、スタッフが働くための拠点であると同時に、お客様をお迎えするためのオフィスが2つあります。
「服部OFFICE」と「曽根OFFICE」。
どちらも、ひかり工務店の“顔”としての役割を持ちながら、会社の思想や空気感そのものを表現する建築です。
スタッフが日々の仕事をする場所であり、お客様がひかり工務店と出会う場所でもあるからこそ、ただの事務所ではなく、訪れた人の心に“心地よさ”が残る空間でありたい。
このふたつのオフィスの設計を手がけたのは、ひかり工務店の統括マネージャーであり設計士の原田。
これまで数多くの住宅を設計し、2023年にはLIXILメンバーズコンテスト2022で準グランプリも受賞している設計士です。
そんな原田に、服部OFFICEと曽根OFFICE、それぞれの建築に込めた想いと設計の背景を聞きました。
服部OFFICE 地面に近づく設計
服部OFFICEが完成したのは2021年。
構想に約2年の時間をかけ、ようやく形になりました。
もともとは近隣商業地域にある、かつて駐車場として使われていた土地。
「大きな建物をつくるよりも、
限られた中でどれだけ心地よく感じられるかを考えました。
だからこそ、建物の“量”ではなく“距離”を意識しました。」
建物の正面は通りに面しており、1階にはお客様とのお打ち合わせスペースがあります。ただ、道路との距離が近いため、外を歩く人と目が合ってしまう心配がありました。
「外の視線を遮るために、1階の床を道路より70cmほど下げています。
そうすることで、外からの視線を自然と避けながら、室内からは地面が目線の高さに近く感じられるんです。」


座ったとき、目の前に広がるのは地面とほぼ同じ高さの植栽。
「人って、無意識のうちに“地面との距離”に影響を受けていると思うんです。座ったときに地面や植物が近くにあると、それだけで少しほっとしたり、心が落ち着いたりする。」
この“地面や自然との距離感”は、原田が学生のころから大切にしてきたテーマでもあります。建築とは、ただの箱をつくることではなく、外の環境をどう取り込み、人が心地よくいられる空間にするか。
服部OFFICEは、その原点をかたちにした場所だと言います。
「建物の中をどれだけ整えても、光や風、緑が入ってこなければ“いい空間”にはならないと思っています。装飾や素材の美しさよりも、周りの環境をうまく取り込み、自然がそこにあることで完成する建築が好きなんです。」
アプローチにも、その考え方が反映されています。
道路から玄関まではあえて距離をとり、傾斜をつけて奥へと導く設計に。「まるで木のトンネルをくぐるような気持ちになってもらいたかった」と原田は話します。
「まっすぐ玄関に入るよりも、少し奥へ進むほうが、
心の準備ができる気がするんです。木々に包まれながら歩く時間が、外から内へと気持ちを切り替えるきっかけになる。
そんな小さな体験を設計でつくりたかった。」


外観は青みを帯びたグレー。
都市の風景に自然と溶け込みながらも、どこか凛とした静けさを纏う色合いです。
「街の中で強く主張するよりも、周囲に馴染みながら存在してほしいと思いました。建物だけが目立つよりも、建つことで通り全体が少し心地よく見えるような、そんな佇まいを目指しました。」
前庭に植えられた木々は、地域に小さな“緑の景色”を添える存在でもあります。オープン当初は、近所の人が花の写真を撮りに訪れることもあったそうです。
「自分たちだけが心地よければいいとは思っていません。このオフィスが建つことで、街の風景が少しでも良くなるなら嬉しい。地域と一緒に育っていけるような場所になればと思っています。」
服部OFFICEは、“働く”と“迎える”をつなぐ場所。そして、ひかり工務店がこれからどんな建築をしていきたいのかを、静かに語りかける空間でもあります。

曽根OFFICE 内に自然を取り込む設計
服部OFFICEの完成からしばらくして、
次に手がけたのが「曽根OFFICE」でした。
服部OFFICEよりもさらに環境条件が厳しい立地で、三方を建物に囲まれ、 大きく窓を開くことが難しい敷地でした。
「服部OFFICEでは“外の庭と近づく”という設計でしたが、曽根OFFICEでは逆に“内に自然を取り込む”という発想にしました。外に開けないなら、中に心地よさをつくろうと考えたんです。」
建物の中央には、存在感のある植栽を配置しています。 天窓から光が差し込み、枝葉の影が床や壁をゆっくりと揺らす。外を眺めるのではなく、建物の中で自然を感じるための設計です。


この庭には、自動散水機能をあえてつけていません。
スタッフが自分たちの手で水をあげ、日々手入れをしています。
「服部OFFICEのときからそうですが、植物も空間の一部として“共に育てる”という感覚を持ってほしかったんです。自動に任せてしまうと、どうしても意識が薄れてしまう。日々の中で植物の変化を感じてもらえたらと思いました。」
室内は壁紙を使わず、木毛セメント板で仕上げています。
この素材は音を吸収しやすく、人の声や生活音が反響しにくい特性を持っています。服部OFFICEよりも空間がコンパクトな分、スタッフ同士の会話やお客様とのお打ち合わせの声が響かないよう、プライバシーにも配慮して設計されています。
お打ち合わせスペースには、家具事業部が手がけた大きなテーブルを配置しています。このオフィスが完成する直前に立ち上がった家具事業部を象徴するように、空間の中心で存在感を放っています。
「家具もまた建築の一部だと思っています。このテーブルを囲んで会話が生まれ、新しい発想やデザインが広がっていけばいいなと思いました。」
外観で最も印象的なのは、大きなガラス窓。周囲の景色を見せるためだけのものではなく、光と風を室内に取り込むためのデザインです。
「 風を取り込んで建物の中を循環させたかった。風がないと植物は元気を失います。だから、吹き抜けを大きくとり、 廊下の床もグレーチングにして、空気が抜けるようにしています。」


服部OFFICEが“地面に近づく建築”なら、
曽根OFFICEは“内に自然を取り込む建築”。
どちらも、外と内のあいだをどうつなぐかという、原田が大切にしてきた軸の中から生まれました。
「訪れたお客様が季節や時間の移ろいを感じられる場所であってほしいと思います。打ち合わせの合間にふと緑を眺めて、 少し肩の力が抜けるような。
そして、それはここで働くスタッフにとっても同じです。窓の外の光や、葉の揺れにふと気づく瞬間が、仕事の合間に気持ちを整えてくれる。お客様もスタッフも、自然の気配を感じながら過ごせる場所でこそ、いい時間や、いい会話が生まれると思っています。」

ふたつのオフィスが語る、ひかり工務店の建築思想
服部OFFICEと曽根OFFICE。それぞれに異なる表情を持ちながらも、根底にあるのは同じ想いです。
自然とつながること。
人と人との距離を、建築で心地よく近づけること。
光や風、緑といった“自然のリズム”を感じられる瞬間をつくることで、働く人も、訪れる人も、この場所で少し心がほどけていく。


原田が大切にしてきたのは、建築を通して“心が動く体験”をつくること。
「訪れた人が心地よさを感じたり、通りがかった人が“何ここ?”と足を止めたり、そんな関心を持ってもらえる建築でありたいと思っています。」
それは派手な造形ではなく、空間の心地よさの中に生まれる小さな驚き。静かな時間の中で、ふと感性を揺らすような“仕掛け”を込めること。
ひかり工務店の設計士たちも、その思想を受け継ぎながら歩んできました。
建物はただの器ではなく、人や環境とともに完成していくもの。
服部OFFICEと曽根OFFICEは、ひかり工務店が、そして原田が、建築家としての誇りを持って積み重ねてきた思想を形にした場所です。
お打ち合わせなどでお越しの際は、 そんな“仕掛け”や空間の表情にも、ぜひ目を向けてみてください。
空間の中に込められた想いを、感じていただけたら嬉しいです。

次回のコンテンツは11月24日です。どうぞお楽しみに。

