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2026/05/11

vol.29 旅の記憶が、人生の輪郭をつくる。

仕事や人生には、日々の暮らしの中で見たものや、旅先で出会った風景、そこで感じた価値観が少なからず影響しています。


街の色。
人々の時間の使い方。
窓辺にあらわれる暮らしの気配。
食文化や、家族との距離感。
日本では当たり前だと思っていたことが、海外ではまったく違うかたちで存在していることもあります。


今回は、社内でも海外旅行が好きな2人にインタビューを行いました。

設計士として、お客様の暮らしをかたちにする一ノ瀬。
広報として、ひかり工務店の想いを言葉にして届ける室田。

職種は違っても、2人には共通していることがあります。
それは、海外の街や文化、人との出会いから、自分の仕事や生き方につながる感覚を受け取ってきたこと。

旅先で見た景色や、現地で交わした会話は、ただの思い出としてではなく、今の2人の価値観や仕事への向き合い方にも少しずつ影響しています。

異国で得た記憶は、どのように仕事の中に生きているのか。
2人の旅の話から、その人らしい感性の育ち方を探りました。

時間の使い方を変えた、オランダでの出会い

バリ、ハワイ、オーストラリア、オランダ、フランス、韓国、タイ、マレーシア、セブ、フィンランド、インド、エジプト。
12か国を訪れてきた室田が、特に自分の人生に大きな影響を与えた場所として挙げたのは、オランダでした。

「場所というより、その旅行がきっかけで人生が変わった感覚があります。そこで出会った人や、話した内容が、今の自分につながっているんです。」

学生時代、室田はバイトと課題、遊びで毎日を埋めるように過ごしていたそう。
忙しくはしていたけれど、それが心からの充実だったかというと、少し違ったといいます。

そんな時、父の仕事関係のつながりで、オランダに住む日本人の方の家に滞在する機会がありました。
現地の方と結婚し、家族とともにオランダで暮らしているその人から聞いたのは、「オランダの人たちは、時間をとても大切にしている」という話でした。

仕事が終われば、家族との時間を過ごす。
ジムに行く。友人とバーで過ごす。
働くことだけではなく、自分のための時間や、誰かと過ごす時間を、当たり前のように大切にしています。

「その話を聞いた時に、若いのに自分は何をしているんだろうって思ったんです。今しかない時間を、ただ埋めるように使っていたのかもしれないって。」

帰国後、室田は英会話を習い始め、バイトも減らしました。
生きていくため、遊ぶために必要なお金があればいい。
どうせ将来は働くのだから、今はもっと、自分の時間を大切に使いたい。

オランダで聞いた言葉は、室田にとって、時間の使い方を見直すきっかけになったそうです。

一ノ瀬も、その話を聞きながら「それは人生変わりますね。」と頷きます。
旅先で出会った何気ない会話が、その後の行動を変える。
海外に行く面白さは、観光名所を見ることだけではなく、自分の中の当たり前が少し揺らぐことにもあるのかもしれません。

誰かに連れて行ってもらう旅から、自分で動く旅へ

オランダを訪れるまでは、家族で海外に行くことが多かったという室田。けれど、その旅をきっかけに、自分から海外へ行きたいと思うようになったそうです。

その後、初めて友人と訪れたのがタイでした。
目的は、「ランタンが夜空に浮かぶ幻想的な祭りを見ること。」

家族旅行では、親が航空券やホテル、現地での移動を整えてくれる。けれど友人との旅では、自分も考え、動かなければなりません。

「初めて、自分の力で海外に行った感覚がありました。家族と行くのとは、また全然違う経験でした。」

誰かに任せる旅から、自分で選び、自分で動く旅へ。
オランダで変わった時間の使い方は、室田の行動そのものも変えていきました。

室田が旅先を選ぶ時に大切にしているのは、直感だといいます。

カレーが食べたいから、インドへ。
ラクダに乗りたいから、エジプトへ。
オーロラが見たいから、フィンランドへ。

何かひとつ強く惹かれるものができたら、その気持ちを原動力に動く。

「やりたいことができたら、すぐ行きたいと思うタイプなんです。思った時に行動することが大事だなと思っています。」

その行動力は、広報の仕事にも通じる部分があります。
興味を持ったことにまず触れてみる。
自分の目で見て、感じて、言葉にする。
情報をただ受け取るのではなく、自分の体験として持ち帰る姿勢が、室田の発信の土台にもなっています。

世界を知るほど、日本の暮らしが見えてくる

多くの国を訪れてきた中で、室田が特に衝撃を受けた国があるといいます。それが、インドでした。
訪れたきっかけはとてもシンプルで、「本場のカレーを食べてみたかったから。」

スパイスの香りが街に漂い、何を食べてもカレーの風味を感じるような日々。帰国後は、香辛料の影響でしばらくおかゆ生活が続いたそうです。

けれど実際に訪れたインドで見たものは、食文化の面白さだけではありません。
心に残っているのは、貧富の差を目の当たりにしたことでした。

観光地で、車の窓を拭きながらお金を求める子どもたち。
本来なら学校に通っている時間かもしれません。
けれど、その子たちはそこで生きるために働いていました。

「自分がすごく裕福だと思っていたわけではないんです。でも、その光景を見た時に、日本で暮らしていることがどれだけ恵まれているのかを感じました。」

知らなければ、想像できないことがあります。
現地に行ったからこそ、自分が当たり前だと思っていた暮らしのありがたさに気づくこともあります。
インドでの体験は、室田にとって、世界の厳しさと同時に、日本での日常の豊かさを知る時間でもありました。

そしてそれは、家づくりを伝える広報の仕事にもつながっています。
家は、ただ美しいだけのものではありません。
安心して帰る場所があること。家族と過ごす時間があること。
日々の暮らしが守られていること。

海外でさまざまな暮らしを見てきたからこそ、室田は、ひかり工務店が大切にしている「暮らし」そのものの価値を、より実感を持って捉えているのかもしれません。

広報に必要なのは、ひとつではない視点

海外での経験が、広報の仕事にどう生きているか。
そう聞くと、室田は少し考えながら、「仕事への向き合い方につながっていると思います。」と話します。

旅先で見た壮大な景色。
出会った人たちの価値観。
日本とは違う暮らし方。

そのひとつひとつが、今も室田の中で、仕事のモチベーションになっています。

「世界にはいろんな国があると思えることが、自分の安心感にもなっているんです。日本だけがすべてじゃない。そう思えるだけで、仕事に対しても、少し広く見られる気がします。」

広報は、会社の想いや家づくりの魅力を、誰かに届ける仕事です。
そのためには、ひとつの見方だけではなく、さまざまな人の価値観に想像を巡らせることが必要になります。

「自分にない感覚や考え方を知りたいと思って、海外に行っている部分もあります。広報の仕事も、いろんな視点を持っている方が強いと思うんです。」

お客様がどんな暮らしを望んでいるのか。
どんな言葉なら、ひかり工務店の考え方が伝わるのか。
何を美しいと感じ、何に心が動くのか。

旅を通して異なる文化や価値観に触れてきた経験は、室田にとって、その想像力を広げるものになっています。

街に降り立った瞬間、心がほどけたデンマーク

一方、設計の一ノ瀬がこれまで訪れたのは、イギリス、フランス、フィンランド、ドイツ、オーストリア、イタリア、デンマーク、スウェーデンの8カ国。
主にヨーロッパや北欧の街を巡ってきました。

その中で一ノ瀬が特に心を動かされたのは、デンマークです。

「デンマークに着いて、荷物を置いて街に出た瞬間に、すごく感動しました。歩いている人がみんな笑顔で、フランクで、受け入れてくれる感じがあったんです。」

平日にもかかわらず、人々はテラスでパンを食べ、鳥と遊び、誰かと話しながら、のんびりと時間を過ごしていました。

特に心に残っているのは、川沿いの広場での出来事。
広場で音楽の演奏が始まると、周りにいた人たちが自然と集まり、踊り始めました。
知らない人同士が笑い合い、曲が終わるたびに拍手をし、また次の音楽を楽しむ。

日本なら、少し遠巻きに眺めてしまうかもしれません。

「時間の使い方も、心の広さも、なんでも楽しむ感じも、すごく良くて。こうやって生きようって思いました。」

室田もその話を聞きながら、「時間を大切にしている感じは、オランダの話ともつながりますね。」と話します。

国は違っても、2人が旅先で受け取ったのは、効率や便利さだけでは測れない時間の豊かさでした。
働くこと、休むこと、誰かと過ごすこと、街を楽しむこと。
そのバランスの中に、人の暮らしの豊かさがある。

ひかり工務店が大切にしている「どんな暮らしがしたいか」という問いにも、この感覚は重なります。

窓辺にあらわれる、暮らしの色

設計士として北欧の街を歩いた一ノ瀬が強く感じたのは、色の大切さでした。

ヨーロッパの住宅は、意外にも建物の形自体はシンプルで、同じようなつくりのものが多いといいます。
けれど、その中で一つひとつの窓に、住む人の個性があらわれていました。

窓辺に緑を置いている部屋。
カラフルな家具が見える部屋。
同じような建物の中でも、暮らす人によって表情が違います。

「形も大事だけど、色ってすごく大事なんだなと思いました。色があるだけで、気分が上がるんです。」

一ノ瀬自身も、カラフルなインテリアが好きだといいます。
けれど同時に、日本の住まいとして考えたとき、ひかり工務店がつくるモダンで美しい住まいにも誇りを持っています。

北欧の色をそのまま取り入れるのではなく、土地や文化によって、似合う住まいの表情は違う。
だからこそ、旅先で見た色や街並みは、設計士としての感性の引き出しになっています。

家そのものの形だけではなく、そこにどんな家具を置くのか。
どんな色を選ぶのか。
どんなふうに光や緑を取り込むのか。

住まいは、完成した瞬間だけで完結するものではありません。
暮らし始めてから、住む人の選択によって表情が変わっていくものです。

家具から空間を考えるということ

海外の暮らし方を見て、一ノ瀬の中で変わったもの。
それは、家具の見方でした。

「海外では、家具がメインで、その家具を引き立たせるために空間がつくられているように感じました。」

ソファを中心に空間が構成されていたり、天井の照明だけではなく、置き照明をいくつも使って部屋の雰囲気をつくっていたり。
家具や照明が、空間の中で強い存在感を持っていました。

その感覚は、現在の設計提案にも少しずつ影響しています。

パースを作るとき、ただ空間のイメージを伝えるために家具を置くのではなく、ものの配置や見せ方まで意識する。
お客様にイメージを伝えるときも、家具やインテリアの写真を交えながら話すことが増えました。

「現地で家具屋さんやブランドを見たことで、話の引き出しは増えたと思います。」

家具を考えることは、暮らしのシーンを考えることでもあります。

一ノ瀬が旅先で見てきた空間の使われ方や家具の存在感は、お客様の暮らしをより具体的に想像するための材料になっています。

本場のサウナで知った、文化としての空間

フィンランドは、今回のインタビューの中で、唯一2人の旅先として重なった国です。

室田にとってフィンランドは、オーロラを見たいという思いから訪れた場所。
自然の壮大さや、日本とは違う空気に触れることで、世界の広さを感じた旅でした。

一方、一ノ瀬にとってフィンランドでの強い記憶は、サウナです。

きっかけは仕事でした。
初めてサウナを設計することになり、サウナについて一から勉強しました。その中でフィンランドが本場であることを知り、現地に行くなら必ず体験したいと思っていたそうです。

実際に訪れたフィンランドのサウナは、日本で知っていたものとはまったく違っていました。

水風呂ではなく、目の前の海に飛び込む。
公園の中に、サウナの施設がある。
街の人たちは、ジムやコンビニに行くような感覚で、日常の中にサウナを持っていました。

日本のサウナは、静かに自分と向き合う場所という印象が強い。
けれどフィンランドでは、ロウリュのたびに歓声が上がり、さまざまな国の人同士が自然に会話をしていたそうです。

サウナは、ただ汗を流す場所ではなく、人と人がつながる文化の一部でした。

同じフィンランドを訪れていても、室田は自然や景色の壮大さに心を動かされ、一ノ瀬はサウナという暮らしの文化に目を向けていました。

その違いは、2人の仕事の視点にも重なります。
広報として、心が動いた景色や体験を受け取り、言葉にする室田。
設計士として、文化の背景や空間の使われ方を読み取り、提案につなげる一ノ瀬。

本場で体験した熱気や空気感は、知識だけでは得られないもの。
その実感が、サウナのある暮らしを提案する時の言葉に、少しずつ厚みを与えています。


旅は、仕事の外側にあるようで、内側に残っている

室田は、旅を通して時間の使い方を見つめ直し、異なる文化や価値観に触れることで、世界を広く見る視点を育ててきました。
一ノ瀬は、旅を通して色や空間の見方を広げ、その土地に根づく文化や、人々の暮らしを楽しむ姿勢に触れてきました。

受け取ったものは違っていても、2人に共通しているのは、旅先で出会ったものを、自分の仕事の中に持ち帰っていることです。

広報として言葉を届けるとき。
設計士として空間を考えるとき。

その背景には、異国で見た景色や、人々の表情、暮らしのあり方が少しずつ重なっています。

旅は、仕事とは離れた時間のようでいて、その人の考え方や選ぶ言葉、空間の見方をつくっていくものでもあります。

2人が旅先で受け取ってきた景色や価値観は、
今の仕事、人との向き合い方、そして生き方の中にも広がり続けています。

次回のコンテンツは5/25(月)です!どうぞお楽しみに。