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2025/06/09

vol.5 建築を愛するふたりが語る、“記憶に残る場所”

ふとした景色に心を奪われた瞬間や、空間に身を置いたときの感覚——
それは、設計という仕事に向き合う中で、確かに原点となっている記憶。

今回のコラムでは、設計部の冨脇と吉田が、それぞれの“記憶に残る建築”について語り合います。

写真左:吉田(2023年中途入社) 写真右:冨脇(2021年中途入社)
設計への向き合い方も、感性も異なるふたり。
それぞれの“記憶に残る建築”について語り合いました。

冨脇が手がけた住まいの一例

“こもり感”をテーマに、居場所としての安心を追求した住まい。


リノベ設計の経験を活かし、新築も含めた“暮らしに寄り添う設計”を心がけています。
お客様らしい空間を一緒につくっていきたいです。

吉田が手がけた住まいの一例

光の“抜け”と“拡がり”をテーマに設計された住まい。

一日のなかで変化する自然光が、空間に豊かなリズムを与えます。
吉田らしい繊細な感覚が活きた、静かな存在感のある一室です。

彼らが何に惹かれ、どんな感情が今の設計に影響しているのか。静かに、でも深く、建築と向き合うふたりの対話をお届けします。

◼︎冨脇の“記憶に残る場所”

建築に強く惹かれるようになったきっかけは、社会人になって間もない頃に訪れた「道の駅ましこ」


当時はまだ、建築家という存在にどこか距離を感じていた自分が、その建物をきっかけに大きく考えを変えることになりました。

「道の駅ましこ」という建築を知ったのは、まだ社会人になって数ヶ月ほどの頃。関西に住んでいた学生時代の友人が関東へ行くことになり、遊びに行くことになって近場で良さそうな場所を一緒に調べていたんです。そこで何気なく見つけたのが、「道の駅ましこ」でした。

出典元:https://www.tochinavi.net/spot/home/?id=15216/画像は引用の目的で掲載しています。

「風景で作り、風景をつくる建築」という言葉に出会ったのが最初のきっかけでした。
建物の外観は、近くの里山の山並みを模したような連続した屋根になっていて、風景の一部のように見える。
それだけでなく、建物に使われている木材もその山の木から、壁や床の左官にはその土地の土が使われている。
まさに“風景で作り”、それによって新たな“風景をつくる”建築だったんです。

出典元:https://www.nikkenren.com/kenchiku/bcs/detail.html?r=2018&ci=950/画像は引用の目的で掲載しています。

設計の段階から地域の人たちと一緒に作られていて、普通なら外部の運営会社が担当する道の駅の運営も、地元の建設委員会の人々が行っているそうです。
農家さんが「ここで野菜を売りたい」「スペースをもっと広くしてほしい」などの声を出して、それに応じて設計も柔軟に調整された。

屋根のピッチを細かくすることで、そういった要望にもギリギリまで対応できたという話に、建築が“人と風景”に寄り添うものになりうるんだと実感しました。少しマニアックな話ですが、、笑

正直、それまでは建築家に対して少し偏見みたいなものが自分の中にありました。でもこの建物に出会って、考えが一変しました。
こんなふうに風景にも人にも丁寧に向き合う建築があることを知って、「あ、建築ってこんなにも優しいものなんや」と。

自分自身も、それからは“生活者のライフスタイル”だけでなく“周囲の環境”からコンセプトを考えるようになりました。
建築家って、建物をデザインするだけじゃなくて、風景や人々の営みに寄り添いながら、文化や循環をつくる存在なんだと
気づかせてもらった大切な経験です。

「道の駅ましこ」との出会いは、冨脇にとって建築の見方を大きく変えるきっかけになりました。
建物だけじゃなく、風景や人の暮らしにまで寄り添う姿勢は、いまの彼の設計にもしっかりと根づいていると感じました。

もう一人の設計士・吉田は、また少し違った視点で“心に残る建築”を語ってくれました。

◼︎吉田の“記憶に残る場所”

私が訪れたスリランカの建築で、特に印象に残っているのが、建築家ジェフリー・バワが設計したホテル「ヘリタンス・カンダラマ」です。
彼の代表作のひとつとしても知られており、自然と建築が融合した空間づくりに心を動かされました。

バワの建築は、「自然を壊すのではなく、取り込む」という思想に貫かれています。このホテルもまさにその体現で、建物自体がまるで山の一部のように存在しているんです。

外壁は岩をよけるように構成され、木々やツタが建物を覆っているところもあって、「人の手でつくったはずなのに、なぜか自然に感じる」。
そんな不思議な感覚がありました。

実際に見た時に、ただ自然の中にいるだけでは味わえない“自然の特別感”を、建築が引き出してくれるということ。山の中にいれば見慣れてしまう景色も、空間を通して体験すると、まるで違った意味を持って見えてくる。

「建築の中に入ることで、自然がより特別に感じられる」

スリランカという気候条件だからこそ実現できる開放感ですが、それをあえて“室内”に持ち込んでいることに驚き、
その潔さに感動したのを覚えています。

こうした経験を通じて、「住宅って本当の意味で快適なのか?」と自問するようになりました。
もちろん、日本の気候を考えれば、暑さ寒さに対応した快適性は必要。でもそれだけじゃなく、毎日同じように流れていく時間の中で、ふと自然を感じられる“間”が、暮らしの中に少しでもあってほしい。そう思っています。

私自身、そうした体験を形にしたくて、インナーテラスのある住宅を2件設計しています。どちらも“外ではないけれど、外を感じられる場所”を意識して設計しました。

インナーテラスや中庭、視線の抜ける場所など、建物の中であっても自然を感じる“余白”を設ける。日々の生活に小さな気づきや安らぎをもたらしてくれると信じています。

◾️最後に

それぞれ違うきっかけで建築に惹かれ、違う視点で設計と向き合っているふたり。

その中でも、共通しているのは、「誰かの記憶に残るような空間をつくりたい」という想いでした。
これからどんな設計を手がけていくのか、私たちもすごく楽しみです。ふとした会話の中にも、その人らしさや設計のヒントが
たくさん詰まっていました。
また別のテーマでも、ふたりに語ってもらいたいなと思います。

そして次回は、6月23日に公開予定。
そして次回は、統括マネージャー原田が手がけた“自分自身のための住まい”について。
プロとしての目線と、一人の住まい手としての感情が交差する、特別なプロジェクトをご紹介します。

ぜひ、ご覧ください。