2025/06/23
vol.6 “住まい手”になった設計士の挑戦
緑が広がる静かな土地に、一棟の家が今、静かに形を成し始めています。
建築主は、ひかり工務店の設計士でありマネージャーでもある原田。
普段はお客様の理想を形にしてきた彼が、今回は“自分自身”の家を手がけています。
このインタビューでは、彼がどんな想いで土地を選び、どんなこだわりで家を設計しているのか、そして現在進行形で進む家づくりの過程で改めて気づいた “家をつくるということの本当の意味” を語ってくれました。
🧷原田の設計に対する哲学や美意識については、過去の記事「本質を捉えたデザインと、未来を見据えた建築」でも詳しくご紹介しています。

◾️自然と共に暮らしたい──それが家づくりの原点
「もともと田舎育ちで、自然の中で暮らすことに心地よさを感じていました」
当初はマンションの購入も検討していたという原田。
しかし、自分の“居場所”を考えたとき、自然に囲まれた暮らしを諦めることはできなかったそうです。
転機となったのは、偶然見つけたある土地。
市街化調整区域という、自然環境や農地などを守るために住宅や商業施設の建設が制限されている土地でありながら、建築が可能といった、まさに”掘り出し物”のような場所でした。
都市部まで車で20分という利便性を備えながら、周囲には建物の気配すらなく、緑に包まれた静かな空間。「ここしかない」と即決したそうです。

自らの家を設計する──それは、これまでにない難しさと、思いがけない発見の連続でした。
原田がこの土地で最初に考えたのは、“いかに自然と調和するか”ということ。
「家の中から人工物が見えないように設計しました。土地の後ろにはもともと大きな山がありましたが、前方にも小さな山を新たに造成することで、まるで自然の斜面の中に家が埋もれているような感覚をつくっています」
さらに、建物の前後にそれぞれ大きな窓を設け、視線が山から山へ抜けていくように設計。
「”人工物を隠す” というのは単なるデザイン的な演出ではなくて ”暮らしの中の風景をどう切り取るか” という思想でもある。」と原田は語ります。
自然の奥行きが室内に連続し、ただ眺めるだけではなく、“自然の中で暮らしている”という体験そのものを生み出しているのです。
◾️家族との時間が教えてくれた、家づくりの本質
地鎮祭や上棟式などの節目を通じて家族が見せた笑顔は、設計士としての原田にとって、何よりの原動力になったそうです。
「お客様の立場を経験したことで、家づくりの本当の価値を再確認しました。職人やスタッフの細やかな配慮に改めて感謝の気持ちが湧いてきました」

奥様と一緒に晩酌をしながら話す時間が日常の何よりの癒しだと話す原田。
ダイニングキッチンは家の中心に設置し、奥様と食事を楽しむ時間が、自然とつながるように設計したとのこと。
インタビュー中、設計に関する深い話の合間に、ふとこぼれる奥様への言葉の数々。
そのひとつひとつに、静かであたたかな愛情がにじんでいて、取材する側まで幸せな気持ちになりました。
◾️”挑戦”が育てる設計力
もちろん、全てが順風満帆だったわけではありません。
自邸という”実験の場”だからこそ、思い切った設計や素材選びにも挑戦できました。
趣味や暮らしの楽しみも随所に散りばめています。サウナを自宅に設置する予定で、庭には将来的にピザ窯をつくる構想も。
暮らしの中に“遊び”と“癒し”も取り込む設計です。

「技術的に難しいこともありましたが、それも含めて大切な経験です。失敗から学び、次の家づくりに生かしていく──このサイクルが自分を育ててくれるんだと思います」
◾️最後に
自然と調和する場所に、自分らしさと家族の笑顔を宿すための家をつくるという挑戦。
その過程は、設計士としての視点に、暮らし手としての実感が重なった、かけがえのない時間でした。
原田の家づくりは今、まだ道半ばにあります。
けれどその一歩一歩が、これから出会う誰かの「理想の住まい」に、そっと寄り添う力になっていくはずです。
なお、完成したお家についても、あらためてコンテンツとしてご紹介する予定です。どうぞ楽しみにお待ちください。
そして次回は、7月7日に公開予定。
“想いをどう届けるか”に悩み抜いた、弊社の映画館広告ができるまでの物語をお届けします。こちらもぜひご覧ください。