2026/03/09
vol.24 選び方が、姿勢ににじむ。住まいをつくる人のベストバイ
住まいづくりの現場では、日々たくさんの選択が行われています。
暮らしをどう描き、お客様にどう伝えるか。
空間の印象を決める寸法や光の取り方。
図面の意図を汲み取り、最終的な収まりを決める判断。
立場は違っても、問われているのはいつも「何を選ぶか」です。けれど、その判断を支えているのは、図面上の理屈だけではありません。
どんなものに惹かれるのか。 何を“いい”と感じるのか。どこに手間をかけたいと思うのか。
日々の暮らしの中で、どんな選び方をしているのか。その積み重ねが、やがて仕事の姿勢としてにじみ出てくる。
そこで今回は、現場監督の岩崎、営業部の池田、設計部の眞鍋に「最近のベストバイ」を聞きました。
一見、仕事とは関係のない話。けれど、その選び方の奥には、住まいづくりに向き合う姿勢が確かにありました。

佇まいで選ぶ。
岩崎のベストバイは、JBLのホームスピーカー「JBL Authentics 200」。
「家で、ちゃんと音を聴きたいなと思って購入しました。」
最終的な決め手になったのは、佇まいでした。歴代のデザインからインスピレーションを得た象徴的なクラシカルデザイン。
インテリア好きの岩崎にとって、家の空間に自然と溶け込むかどうかが重要だったといいます。
無骨さがありながら、操作はアプリで完結する最新仕様。
「昔ながらの見た目で、中身は今。それがちょうどいいんです。」
アンプ機材のような存在感。
低音は力強く、それでいて部屋の家具と並んだときに浮かない。
スペックだけではなく、空間の中でどう見えるか。そこに重きを置いた選択でした。
話は自然と音楽の話題へと広がります。
池田は、長くピアノを続けてきました。
母親の影響で小学生から始め、一度は辞めたいと思った時期もあったそうです。
しかし、J-POPの好きな曲をどうしても弾けるようになりたくて練習し、学校で披露したときの反応が転機になりました。
「思った以上に盛り上がって。それが嬉しくて。」
前に立ち、音で空気が変わる感覚。
その体験が、演奏する楽しさへとつながっていきました。
高校ではバンドでキーボードを担当。
「チヤホヤされたかったんですよ」と笑いながらも、誰かに楽しい感情を届けられる瞬間にやりがいを感じていたと話します。
そんな池田も、Audio-Technicaのヘッドフォンを愛用中。
「自分で弾いてきたからこそ、音は遅延なく、ダイレクトに聴きたいんですよね。」
音楽への愛情が、今も変わらずに続いています。
設計部の眞鍋も、ライブやフェスに足を運ぶ音楽好き。会場の空気ごと体感する時間を大切にしています。
普段はMarshallのヘッドフォンを使用。決め手はフィット感と使い心地。長時間つけても疲れないことがお気に入りだといいます。
音をどう置くか。どう聴くか。どう体感するか。
音に対する向き合い方を聞いているうちに、三人の“選ぶ基準”が少しずつ見えてきました。


人で選ぶ。
池田のベストバイは、横浜の夫婦職人が手がける革ブランド、「N25」の財布。
学生時代に出会い、憧れていた存在でした。
当時は手が届かず、いつか、と心に留め続けていたブランドです。
社会人になり、京都で展示会があると知って足を運びました。
もともとそこで購入するつもりではなかったといいます。
しかし、会場で直接職人の方に話を聞いたことが大きかったと語ります。
革の質感や縫製の話。経年変化の美しさ。
商品の説明というよりも、
“この財布をどう育ててほしいか”を語る姿が強く印象に残ったそうです。
「商品への愛情と誇りを強く感じました。」
革の話になると、言葉に熱がのる職人の姿を目の前にして、池田はその場で購入を決めました。
真鍮部分に刻まれた数字。
一つひとつ異なる個体差。
傷が重なり、数年かけて自分だけの表情になっていく。
スペックや価格ではなく、
最後に背中を押したのは「人」でした。
その出来事は、営業としての自分にも重なるといいます。
「やっぱり、自分が本当にいいと思っていないと、うまく語れない。
自分がその価値を心から好きでいられているからこそ、お客様にも自信を持って伝えられるんだと思います。」
熱意は、つくろうとするものではない。
納得しているからこそ、自然とにじみ出るもの。
展示会で感じた“つくり手の姿勢”は、
いま営業スタッフとしてお客様と向き合う姿勢にも重なっていると話します。
岩崎も「ネットで何でも買える時代だからこそ、お店で買う意味がある」と語ります。
たとえオンラインで購入できるものでも、一度は店舗に足を運ぶようにしているそうです。
モノを選ぶ。
けれど実際は、人で選んでいる。
その実感は、いまの営業としての姿勢につながっています。


体験で選ぶ。
「相談する時間も含めて、価値ですよね。」
池田の話を聞き、眞鍋がそう続けます。
モノそのものだけではなく、
その場で交わされる会話や、選ぶ時間も含めて価値になる。
その感覚は、自身のベストバイにも重なっていました。
眞鍋が選んだのは、パリ発の総合美容専門店、「Officine Universelle Buly」のコーム。
きっかけは京都の店舗でした。
他の店舗とは異なり、和のデザインを取り入れた空間だと聞き、一度見てみたいと思ったといいます。
実際に足を運ぶと、そこには凛とした静けさがありました。
ショーケースに整然と並ぶコーム。
色やサイズ、柄の入り方は一本ずつ異なります。
二十本ほどの中から、自分の一本を選ぶ時間。
「選ぶ時間そのものが楽しかったですね。」
刻印するフォントも位置も自分で決める。
完成品を受け取るのではなく、体験ごと持ち帰る感覚。
休日にカフェへ行くときも、食べ物以上に建物や内装に目が向くといいます。素材の扱い方、光の入り方、空間の余白。
そうした“場”への関心は、実は高校生の頃から芽生えていました。
駅前に大きな複合施設をつくるプロジェクトが始まり、一年ほどかけて工事が進んでいく様子を、自転車通学の途中で毎日眺めていたそうです。
鉄骨が立ち、外壁が張られ、少しずつ形になっていく風景。
「完成していく過程を見ているだけで、心が躍ったんです。」
人が集まる場所が生まれていく、その感覚に惹かれました。
そこから建築の道を志しました。
そして数ある分野の中で住宅を選んだのは、
より直接的に、住まう人の喜びに触れられる仕事だと感じたから。
体験ごと価値になる。
その原点は、
高校生の頃に見上げていた工事現場の風景へとつながっていました。


好きに、誠実に。
三人に共通していたのは、自分の「好き」に誠実であることでした。
流行でも、誰かの評価でもなく、
自分の中にある基準を信じること。
その基準があるからこそ、
お客様の価値基準にも真摯に向き合える。
家づくりとは、価値基準をかたちにする仕事。
だからこそまず、自分自身が、自分の基準にまっすぐであること。
三人が選んだベストバイの話は、いまの仕事の姿勢そのものを映していました。
次回のコンテンツは、3/23(月)です。どうぞお楽しみに。

