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2026/09/07

vol.37 つくる側から、暮らす側へ。

日々、お客様の住まいづくりに関わっている私たち。
暮らしについて話を聞き、たくさんの選択を重ねながら、一つの住まいができあがっていく過程を何度も見てきました。

けれど、自分自身が家づくりをする立場になってみると、これまで知っていたことも、少し違って見えたといいます。

今回話を聞いたのは、実際にマンションリノベーションを経験した、新築ディレクター(営業)の清水と、マンションリノベーションディレクター(営業)の木下。

つくる側から、暮らす側へ。

自分たち自身が迷い、選び、誰かに任せ、そして暮らしてみたからこそ気づいたことを聞きました。

知っていることと、経験することは違った。

普段から家づくりに関わっている二人。
だからこそ、自分たちの家づくりはスムーズだったのではないかと思ってしまいますが、実際には「分かっていても大変だった」と振り返ります。

木下:「分かっていても、実際に自分のことになると大変でしたね。普段はお客様にご案内する側ですが、日々の生活や仕事を続けながら、手続きや家具・インテリア、引っ越しのことまで、いくつものことを同時に決めていく難しさは改めて感じました。」

一方、清水が特に印象に残っているのは、物件探し。

もともとは戸建てを中心に探していましたが、なかなか納得できる物件に出会えず、思うように進まない時間が続いたといいます。

清水:「ある程度知識がある自分たちでも、なかなか家づくりが進まないと夫婦の間でズレが出てくるんですよね。そう考えると、初めて家づくりをするお客様はもっと大変なんだろうなって、実際に自分が経験して改めて思いました。」

家づくりの流れを知っていることと、その中で自分自身が一つひとつ判断していくこと。

その二つは、似ているようでまったく違うものだったようです。

自分たちも同じ立場を経験したことで、お客様が迷ったり、なかなか答えを出せなかったりする時間についても、以前より具体的に想像できるようになったそうです。


全部を、自分たちだけで決めなくてもいい。

決めることの多さを実感した一方で、二人とも設計については意外なほど迷わなかったといいます。

木下が大切にしていたのは、猫も人も心地よく暮らせること。そして、少し暗く落ち着いた、ホテルのような空間。

清水も、生活感をできるだけ抑えたいことなど、大きな方向性はありましたが、細かなところまですべて指定しなかったそうです。

木下:「自分たちの中で、絶対に大切にしたいことと、これは違うというところだけ伝えて、あとは任せていました。全部自分たちで決めるより、その方が良いものになるだろうなと思っていたので。」

清水:「僕も設計についてはほとんど任せていましたね。普段仕事をしている姿を見ていたので、何とかしてくれるだろうという安心感がありました。」

自分たちですべてを決めることが、必ずしも家づくりの正解ではない。大切にしたいことを整理し、それをきちんと共有したうえで、専門家の視点に委ねる。

実際に「任せる側」を経験したことで、その関係の大切さにも改めて気づいたといいます。

木下の住まい
清水の住まい

「任せたい」と思えるまでには、理由がある。

自分自身が住まいを任せる立場になったからこそ、二人の中では「信頼」についての捉え方にも変化がありました。

清水:「信頼って、一回良い提案をしたから生まれるものではないと思うんです。仲良くなったからということでもなくて。お客様に対して、本当に必要なことをどれだけちゃんと話せるか。その積み重ねだと思っています。」

お客様から出てきた希望を、そのまま形にするだけではない。

なぜそう思っているのか。その背景にはどんな暮らしや価値観があるのか。
ときには、まだ本人も気づいていないことまで一緒に考えていく。

清水:「お客様の状況や背景によって、必要なことは一人ひとり違います。話している中で、この人たちなら自分たちの思いを汲み取ってくれそうだなと思ってもらえるところまで、丁寧に積み重ねていくことが大事なんだと思います。」

自分たち自身が、「この人なら任せられる」と思って家づくりを経験したからこそ、誰かに住まいを任せることの大きさも、そのために必要な信頼も、以前より強く実感するようになったそうです。

住んでみて、初めてわかったこと。

そうして完成した住まい。
実際に暮らしてみると、設計中には想像しきれなかった心地よさも、日々の中で少しずつ見えてきます。

木下が住まいの中で特に気に入っているのは、ワードローブと、ソファから見える景色。

木下:「ソファから、カウンターに飾っている花や照明を見るのが好きですよね。音楽を聴きながら過ごしたり。何か特別なことではないんですけど、その時間が気に入っています。」

暮らし始めてからは、以前より掃除をする頻度も増えたといいます。

きれいにしなければならないという義務感ではなく、自分からこの空間をきれいに保ちたいと思うようになった。

住まいが変わったことで、何気ない日々の習慣にも変化が生まれました。

一方、清水が挙げたのは、寝室からLDKへと続く少し細い廊下。

清水:「朝起きて、寝室からあの廊下を通るときが結構好きなんです。ちょっと秘密基地みたいな感覚があって。普通なら、廊下をなくして部屋を広くするという考え方もあると思うんですけど、全部を削ぎ落とすことが正解ではないんだと実感しました。」

効率だけを考えれば、なくすこともできた場所。

それでも暮らしの中では、一見遠回りに見える空間が、毎日に小さな楽しさをつくっています。

また、清水の住まいでは、暮らし始めてから家族構成も変わりました。

清水:「住み始めた頃とは家族構成も生活の仕方も変わっています。でも、それに合わせて使い方を変えられているので、そこまでストレスはないですね。ある程度、空間に余白があったからだと思います。」

完成した瞬間だけではなく、暮らしが変化しても心地よくあり続けること。

住んでみて初めて、設計に込められていた意味が分かることもあるようです。

条件より先に、考えたいこと。

自分たちが実際に家づくりを経験した今、これから家づくりを始める人に、最初にどんなことを考えてほしいか。

二人から出てきたのは、広さやエリアといった具体的な条件よりも、その手前にあることでした。

清水:「僕だったら、最初に“何のために家が欲しいんですか”って聞くと思います。」

清水自身、最初は戸建てを中心に物件を探していました。
けれど、なかなか希望に合う物件が見つからない。

そこで改めて考えたのが、自分が本当に叶えたかったことでした。

清水:「最初は戸建てという条件で探していたんですけど、振り返ると、僕が本当に欲しかったのは戸建てそのものじゃなかったんですよね。自分たちが好きな空間で、家族と心地よく暮らしたかった。だったらマンションでもいいんじゃないかと思えて、そこからは早かったです。」

「このエリアがいい」
「駅から近い方がいい」
「戸建てがいい」
「これくらいの広さが欲しい」

家づくりを考え始めると、さまざまな条件が出てきます。

もちろん、どれも大切です。

けれど、その条件の奥には、必ず「なぜそうしたいのか」という理由があります。

木下:「いくらで何を手に入れるかということだけじゃなくて、その先で自分たちがどう過ごしていきたいのか。それが本来、一番大事なところなんじゃないかなと思います。」

何を買うかを考える前に、どんな暮らしをしたいのかを考える。
二人自身が条件に迷った経験があるからこそ、今では以前にも増して大切にしていることです。

まだ言葉になっていないことも、一緒に考える。

今は、SNSやYouTube、Webサイトなどを通して、家づくりについてたくさんの情報を得ることができます。

価格や金利、間取り、エリア。
自分自身で調べ、比較し、ある程度の判断までできるようになった一方で、情報が多いからこそ「自分たちには何が合っているのか分からない」と迷うこともあります。

そんな中で、清水が大切にしているのは、お客様から出てきた希望や条件だけを、そのまま答えとして受け取らないことです。

清水:「お客様が言葉にできる希望や不安って、その時点で知っていることの中から出てくるものだと思うんです。知らないことは、そもそも選択肢にも入れられないですよね。

だから、今出ている条件だけを見るんじゃなくて、その背景にある思いを一緒に整理したり、まだ知らなかった選択肢を提示したりする。そこに、僕たちが関わる意味があると思っています。」

家づくりを始めるとき、最初からすべての希望が整理されている必要はありません。

「賃貸のままでもいいのか」
「買うなら戸建てなのか、マンションなのか」
「そもそも今、家を買うべきなのか」

そんな迷いが残ったままでもいいと、木下は話します。

木下:「何かしら不安や迷いがあるなら、その状態で一度話してもらえたらと思います。最初から正解が決まっているわけではないので、話をしながら一緒に整理して、少しずつその人に合った答えに近づいていけたらいいですよね。」

普段は住まいづくりを支える側にいる二人も、自分自身の家づくりでは迷い、立ち止まり、誰かに委ねながら、自分たちなりの答えを見つけてきました。

その経験があるからこそ今は、目の前にある条件だけではなく、その奥にある「どう暮らしたいのか」まで一緒に考えることを、より大切にしています。

答えを決めてから始めるのではなく、答えを探すところから始める。

一度、自分たち自身が家づくりの当事者になった経験は、今も二人のお客様との向き合い方につながっています。

次回のコンテンツは、9/21(月)です。どうぞお楽しみに。