2026/10/05
vol.39 「らしさ」を探して、一棟の家をつくる。
ひかり工務店では、普段の「部署」という枠を越え、さまざまなメンバーが集まってひとつの建築をつくり上げる、社内プロジェクトを行っています。
ディレクター(営業)、設計、デザイナー、工務。
それぞれの仕事で培った視点を持ち寄り、いつもの役割だけにとどまらず、ひとつのものを一緒につくっていく。
今回、その舞台となったのが、宝塚市山手台に計画された一棟のモデルハウスでした。
このプロジェクトについて話を聞いたのは、新築ディレクター(営業)の清水、設計の一ノ瀬、デザイナーの佐々木、そして現場監督の福中。

プロジェクトの大きなテーマは、
「ひかり工務店のスタンダードとなる、モデルハウスをつくる。」
部署も、社歴も、普段担っている仕事も違うメンバーたち。
一方で、今回話を聞いたメンバーには、ひとつの共通点がありました。
全員が、新卒でひかり工務店に入社しているということ。
だからこそ、プロジェクトの中で向き合ったのは、間取りやデザインだけではありませんでした。
「そもそも、ひかり工務店の家の良さって何なんだろう。」
普段は当たり前のようにやっていることを、一つひとつ言葉にしてみる。
お客様のために考えること。新しい素材や方法にも挑戦すること。
簡単な答えで終わらせず、その人にとって本当にいいものを探すこと。
それぞれが思う“ひかり工務店らしさ”を持ち寄り、言葉を重ねていき、
モデルハウスは少しずつ形となっていきました。

その人にしか、わからない良さ
「今まで携わったひかり工務店の家の中で、どの家が一番好き?と聞かれても、なかなかひとつには選べない。」
プロジェクトメンバーの間では、そんな会話があったそうです。
それは、好きな家がないということではありません。
家族構成も、暮らし方も、好きなものも、かけられる予算も違う。
一人ひとりのお客様と向き合い、その人のための答えを探してきたからこそ、一棟だけを切り取って比べることが難しいのです。
そんな話を重ねる中で、ひとつの言葉が浮かびました。
「その人にしか、わからない良さ」
ほかの誰かが見れば、不思議に思う間取りかもしれない。
けれど、そこに住む人にとっては、それが一番心地いいこともある。
決まったデザインや間取りに当てはめるのではなく、一人ひとりの暮らしに向き合い、その人にとっての答えを探していく。
「ひかり工務店のスタンダード」とは、特定のデザインや間取りのことではなく、そうした家づくりの姿勢そのものなのかもしれない。
そう話がまとまっていったそうです。
答えのない家から、答えを見つける
けれど、ここでひとつ難しいことがありました。
モデルハウスには、目の前にお客様がいません。
「お客様がいたら、その人にとってのベストを探せるんですけど…。」
今回、初めてモデルハウスのデザイナーを担当した佐々木は振り返ります。
普段なら、目の前にいる人の好みや暮らしを聞きながら選択肢を絞っていける。
最後に決めるのも、お客様です。
けれど今回は、自分たちで考え、自分たちで選び、自分たちで最後の答えを出さなければならない。
メンバー全員がひかり工務店で家づくりを学んできたからこそ、その違いは思いのほか大きなものでした。
そこで初期の話し合いから生まれたのが、「答えの出る家」という考え方でした。
このモデルハウスそのものを、誰にとっても正しい一つの答えにするのではない。
ここを訪れた人が、
「私は広いリビングが好きなんだ。」
「吹き抜けがある方が心地いい。」
「もう少し囲まれた場所の方が落ち着くかもしれない。」
と、自分の中にある“好き”に気づいていく。
たとえ「これは自分には違う」と感じたとしても、それもまたひとつの発見です。
家を見ることで、自分の暮らしを知る。
山手台モデルの輪郭は、そんなところから少しずつ見え始めました。


ここから、それぞれの家へ
その考えを、一ノ瀬は設計の中で「HUB」という言葉に置き換えました。
イメージしたのは、空港です。
一度ひとつの場所に集まり、そこから、それぞれの目的地へ向かっていく。
今回の山手台モデルも、そんな家づくりの起点になればいい。
ここへ来れば、ひかり工務店が考えるさまざまなアイデアを実際に見ることができる。
そして、その中から自分の好きなものを見つけ、それぞれの家づくりへ持ち帰っていく。
設計には、山手台の敷地そのものも大きく影響しました。
道路側に見える山。南側に広がる景色。
角地だからこそ生まれる、いくつもの方向への抜け。
「この敷地だからできることを、全部生かしたかったんです。」
見る場所によって異なる景色を切り取りながら、視線が外へと抜けていくようにプランを組み立てていく。
人が集まり、またそれぞれの方向へ広がっていく「HUB」という考えと、いくつもの方向へ開かれた山手台の土地。
二つが重なりながら、建築のかたちがつくられていきました。
モデルハウスコンセプト「kadoをほどく」
設計が進み、そこに佐々木のデザインが重なっていきます。
生まれた内装コンセプトは、「kadoをほどく」。
「角」と聞くと、尖ったものを想像するかもしれません。
けれど、この家にあるのは、その反対です。
壁や天井にはやわらかなアールを取り入れ、照明の光が素材の表情を静かに照らす。
ライン状の光は、その先にも空間が続いていくように視線を導いていきます。
今回目指したのは、ハイエンドなモデルハウスではなく、もっと気軽に訪れることのできる場所。
仕事や子育てに忙しい人が家に帰り、ふっと緊張を解いていく。
そんな感覚も、「ほどく」という言葉には込められています。
敷地の“角”。
景色を切り取る“角”。
そして、空間の中でほどかれていく“角”。
それぞれが別のところから考えていたものが、不思議とひとつの言葉の中で重なっていきました。


一枚を決めるまでの、三か月
家の中でも印象的なのが、タイルの使い方です。
きっかけは、一ノ瀬が以前から気になっていた東京のホテルの内装でした。
何気なく共有したイメージを、佐々木がデザインへとつないでいきました。
そこから始まったのが、二人のタイル探しです。
メーカーのショールームを何軒も巡り、気になるものはサンプルを取り寄せる。
実際に使われている空間を見るため、店舗へ足を運んだこともありました。
色はどうするか。マットか、光沢か。
どれくらいのサイズなら、広い面に貼ったときに美しく見えるのか。
一歩違えば、空間の印象そのものが変わってしまう。
最後の一枚を決めるまでにかかった時間は、およそ三か月。
「最終的に自分たちで決めないといけないのが、一番難しかったですね。」
普段なら、お客様の好みを聞き、プロとして選択肢を提案することができます。
けれど今回は、提案する側である自分たちが、最後の答えまで選ぶ。
モデルハウスをつくるという仕事の難しさが、小さな一枚のタイルにも表れていました。
「やりたい」を、止めない。
自由に考えれば、当然、予算とのせめぎ合いも生まれます。
タイル、照明、仕上げ、アールの壁。
やりたいことを積み重ねていけば、当初の予算だけでは収まらないこともある。
そこでディレクターの清水が大切にしたかったのは、設計やデザインを最初から予算だけで縛らないことでした。
「まず、やりたいものを考えてほしかったんです。」
必要なものに、いくらかかるのか。
その金額をつくるために、どこを調整できるのか。
工事費、設計の見積もり、広告費、販売価格。
それぞれの担当者が同じプロジェクトにいるからこそ、ひとつの予算を部署ごとに分断せず、プロジェクト全体で考えることができました。
そして、メンバーの中で今も印象に残っているのが、清水のひと言です。
「その先のことは、僕がなんとかする。」
その言葉があったことで、一ノ瀬も佐々木も「好きに考えていいんだ」と思えたと話します。
一つひとつにきちんと理由があり、その価値を自分たちの言葉で伝えられるものなら、まずは思い切って考えてほしい。
そして、その先にある予算やプロジェクト全体のことは、自分が考える。
設計やデザインの可能性を狭めるのではなく、それをどうすれば実現できるのかを考えること。
それが、このプロジェクトで清水が担った役割でした。


つくる理由まで、現場へ
そして、考えられたものを最後に実際の建築へ変えていくのが、現場です。
現場監督としてプロジェクトに参加した福中は、今回は設計やデザインを考える初期段階から、打ち合わせに加わりました。
普段であれば、現場監督が本格的に関わるのは、設計されたものを実際の建築へと落とし込んでいく段階から。
けれど今回は、図面だけでは見えない、その手前にあるものまで知っていました。
考えられてきた過程を知っていることは、実際に現場が動き始めてから、大きな違いになったといいます。
施工を進める中では、職人さんから「こっちの方法でもいいんじゃない?」と提案されることもあります。
そんなときも、今回はこの形にした理由や、目指している空間を踏まえて話すことができたといいます。
「こういう意図があるから、ここはこうしたい。」
誰かから受け取った図面をそのまま伝えるのではなく、自分自身もその意図を理解したうえで、現場へつないでいく。
「流されずに、自分の意思で伝えられたんです。」
福中にとって、最初からプロジェクトに加わることの意味は、現場に立って初めて、よりはっきりと見えてきました。
一方で、現場が始まって初めて分かった難しさもあります。
特に、家の随所に取り入れたアール。
仕上げによって下地のつくり方も変わり、クロス、タイル、塗り、それぞれに細かな精度が求められます。
それでも福中は、計画段階で施工の難しさを理由に、できることを狭めすぎないようにしていたといいます。
「せっかくなら、一ノ瀬さんと佐々木さんには自由に考えてもらいたかったんです。」
つくり手の自由を、現場から止めない。
そのうえで、どうすれば実現できるのかを考える。
それもまた、このプロジェクトを支えた仕事のひとつでした。


違う仕事を、ひとつのテーブルで
振り返ってみれば、このプロジェクトは決して、最初から勢いよく進んでいたわけではありませんでした。
誰かの案が出れば、「それ、いいね。」
別の案が出ても、「それもいいね。」
全員が人の意見を受け止める性格だったからこそ、なかなかひとつに決まらないこともありました。
けれど、その空気があったからこそ、それぞれが自分の考えを素直に口にすることができたのかもしれません。
設計は、敷地と暮らしから考える。
デザイナーは、素材や光から空間をつくる。
現場監督は、それを実際につくる方法を考える。
ディレクターは、その価値をお客様へ届ける方法を考える。
普段なら、仕事は順番に手渡されていきます。
けれど今回は、最初から最後まで、違う仕事をする人たちが同じテーブルにいました。
だから、予算の話をしながらデザインを考えられた。
施工の話をしながら設計を変えられた。
建築の意図を知ったうえで、現場へ伝えられた。
それぞれが、それぞれの部署で積み重ねてきた経験を持ち寄り、一棟の家へとつないでいく。
山手台モデル「kadoをほどく」は、そうして少しずつ、かたちになろうとしています。
完成した家の中にあるのは、プロジェクトメンバー誰かひとりの答えではありません。
皆んなで話して、迷って、選んで、また考える。
その繰り返しの先に生まれた、ひかり工務店のひとつの“スタンダード”です。
そして、この家を訪れた人がここからまた、自分だけの答えを見つけていく。
そんな新しい家づくりの起点が、山手台に生まれようとしています。
ぜひ、現地でご体感ください。
山手台モデルハウス「kadoをほどく」事前見学予約:https://www.hikarikoumuten.com/kado_release/
次回のコンテンツは、10/19(月)です。どうぞお楽しみに。

